前回、自己資本比率の観点から「ROE」に触れました。
出資の文化が日本より遥かに長い欧米の方が何故企業の平均自己資本比率が低いのか?
今回はこの点について、ROEの観点から少し触れたいと思います。

ROE=自己資本利益率と言われますが、これは分子に当期純利益、分母に自己資本の与式を与えられる指標である為、少ない自己資本で多くの当期純利益を稼ぎ出すことがこの指標を上げることと理解出来ます。
日経平均基準ではこの数値が平均約8-10%
米国指標ではこれを約5%上回る数値となっております。

この点だけに着眼すると、「自己資本比率=分母が大きい日本企業のROEは自ずと低くなりそう」というイメージが湧きます。(叩き出す利益については、業態で様々なのでここでは触れません。)
しかし、ことはそう単純では無いのが実情です。

自己資本は資本金だけでなく、株主等への還元財源となる剰余金等も含まれます。つまり、自己資本比率の低い欧米は単に負債を稼いで自己資本を抑えているという単純な比率推測は適当ではなく、きちんと儲かった利益を株主へ還元していることが影響している可能性が含まれます。
また、株主とは外部の出資者に限らず、身内の従業員に持株させる恩恵を付与している可能性も考えられます。
つまり、財務指標には定量化されない、周囲の期待値の向上、身内のやる気モチベーションアップによる戦闘力向上に寄与している可能性が大いにあるのです。

この切り口で言えば、ROEと並んで総合力を図るROA(総資産利益率)は、非効率な資産を圧縮することがROAを向上させる唯一施策だと考えている経営者が存在しますが、これではあまりにも表面的過ぎな発想です。
数値には表れない資産として、人材戦力、販路、営業サービスノウハウなども立派な資産です。これを洗練することもROAを向上させる重要なファクターです。

とすれば、このROAを高める為に、ROEを高める配当循環型ウエイトを稼ぐことは極めて有効的な施策と言えましょう。

安定を図る為に留保をキープしたい気持ちは分かりますが、おカネは貯めておいても殆ど価値を生みません。
これからも益々、稼ぎだした利益を株主、従業員、他社への投資に循環させることで、企業の総合力=ROA・ROEを向上させましょう。